19世紀にポピュラーだったロッシーニを含む6名の作曲家のオペラで使われている曲の主題を使った変奏曲6曲一組のバイオリン曲集です。
目次
『エア・バリエ』の意味
フランス語の楽曲名で、”Air” は『アリア』、”Varié” は『変奏』という意味です。
フランス語で表記すると “Air Varié” となります。6曲セットで言及する場合は “Airs Variés” と書くとより正確ですが、フランス語は語尾のsは発音しないので読み方は変わりません。
一応「変奏」という言葉の解説をしておきますと、ある主題(≒フレーズ)をアレンジすることです。
変奏曲の場合、最初に主題の提示があって、その後にさまざまなアレンジをかけた複数の変奏を演奏していく形になります。
作曲家について
作曲したシャルル・ダンクラ(Jean Baptiste Charles Dancla 1817~1907)はフランスのバイオリニスト・作曲家です。
ちなみに『エア・バリエ』という名前のついた作品はOp.89の他にもう1つあってOp.118の番号が振られています。Op.118も6曲セットですが主題の引用元は6曲ともベッリーニからの引用となっています。
難易度
バイオリンの演奏レベルを入門からプロフェッショナルまでレベル1からレベル10までの10段階に分けた場合、この曲たちは下から数えて5番目に属するそうです。
出典元は http://violinmasterclass.com のGraded Repertoire のページです。
なお、リンク先にアクセスされる場合は、2022年時点では一般的なSSL通信化(暗号通信化)されていない古いサイトですのでご留意ください。
ちなみに3歳ぐらいからバイオリンを始めた人は小学校3~4年で弾くそうです。
他の曲との比較
モンティの『チャールダーシュ』より難しく、クライスラーの『愛の喜び』よりは簡単ということになるそうです。エックレスの『ソナタ ト短調』と同じくらいかもです。
確かに『チャールダーシュ』はハーモニクスの部分さえどうにかなれば、地道にテンポを上げていく練習をしておけばなんとかなるイメージがあります。『愛の喜び』はまだそのレベルに達していないのでわかりません。
曲の構成について
全6曲で構成されています。
- 第1番 パチーニの主題
- 第2番 ロッシーニの主題
- 第3番 ベッリーニの主題
- 第4番 ドニゼッティの主題
- 第5番 ヴァイグルの主題
- 第6番 メルカダンテの主題
各曲について説明していきます。
第1番 パチーニの主題
メイン部分はへ長調です。『新しいヴァイオリン教本』3巻に収録されています。
前奏内で転調があります。ニ短調で始まってなぜかイ長調になり、主題に入ってからは臨時記号が多いですがへ長調です。
第3ポジションまでしか出てきませんので、音域的にはとっつきやすいかなと思います。ただ前奏はあまり見ない感じの転調があったり、コーダはスラーの付き方が独特でちょっと慣れが必要でした。
パチーニはイタリアの作曲家です。
第2番 ロッシーニの主題
ホ長調です。『新しいヴァイオリン教本』4巻に収録されています。
「エア・バリエ」と言った場合は大体その後に「ロッシーニのやつ!」って続くイメージです。たぶん6曲の中でこれが一番有名です。
第5ポジションまで出てきますが、ほとんどは第3ポジションまでで弾けると思います。
ロッシーニは有名すぎて説明する必要はないと思いますが、イタリアの作曲家です。
第3番 ベッリーニの主題
ニ長調です。『新しいヴァイオリン教本』3巻に収録されています。
第2変奏に多数の重音やハーモニクスが出てくるので難しいです。あと前奏の最後のオプション部分を弾く場合は第7ポジションあたりまで駆け上がりますが基本的には第3ポジションまでです。
ベッリーニはイタリアの作曲家です。
第4番 ドニゼッティの主題
変ロ長調です。途中でちょっと平行調のト短調になったりします。短い前奏はピアノのみでバイオリンは主題から参加です。
基本的に第3ポジションまでですが、任意のオプション部分で第6ポジションまであります。
ドニゼッティはイタリアの作曲家です。
第5番 ヴァイグルの主題
ト長調です。6曲中唯一の3拍子の曲です。前奏はピアノのみ。バイオリンは主題からスタートです。
曲の冒頭がなんかザイツとかリーディングを彷彿するのは自分だけでしょうか。
音域的には第3ポジションまでですが、最後に第6ポジションが出現します。ただしこの第6ポジションの箇所は1オクターブ下げて弾いてもいいみたいです。
それと後半で弓を動かしながら左手でGD線をピッチカートする奏法が出てきます。あとハーモニクスも何箇所か同じパターンで出てきますね。
ヴァイグルはオーストリアの作曲です。
第6番 メルカダンテの主題
ニ長調です。短い前奏はピアノのみでバイオリンは主題から参加です。
変奏は3つあり、第3変奏後半がコーダ的な感じで重音が多く見られます。重音自体は数が多いだけで極端に難しくはないかなと思います。むしろテンポが上がりやすいです。
メルカダンテはイタリアの作曲家でフルート界隈では有名みたいです。Op.89の6曲の中ではこれが一番弾きやすいかもしれません。
楽譜の入手方法
最後に楽譜の入手方法です。
1、2、3番は『新しいヴァイオリン教本』の3巻と4巻に含まれています。全集が日本国内版、輸入版の双方で入手できます。
輸入楽譜については、関東であれば銀座のヤマハか山野楽器で取り扱いがあります。関西ですと大阪なんばか神戸三宮のヤマハ、あるいは輸入楽譜専門店の大阪梅田のササヤ書店で入手できると思います。
ササヤ書店のリンクを貼っておきます。https://sasaya.gakufu.net
ちなみに私はササヤ書店でよく楽譜を買っています。
『新しいヴァイオリン教本』は楽器店や大型書店など比較的どこでも売っていると思います。
IMSLPにもある
版権切れ楽譜を大量に集めているデータベース “IMSLP” にも掲載されています。
基本的にかなり古い時代に出版された楽譜なので印刷の品質が低い(昔の楽譜は紙の節約のためか遠目に見ると黒さが目立って見づらい)ことや、指遣いなどが現代的でない部分もあるようです。
見やすく自分で浄書すれば全然使えるとは思います。リンクは https://imslp.org/wiki/6_Airs_variés%2C_Series_I%2C_Op.89_(Dancla%2C_Charles) です。
無料でダウンロード可能です。