Twitterで話題になっていたので記事を書いてみます。「音楽教室、習いに行くならどっち?」問題。
目次
音楽教室の大まかな分類
- 大手系列
- 音楽大学系列
- 小規模教室
- 個人教室
よく「大手系列」と「個人教室」の2つで対比されますが、自分の知る限り音楽教室には上記の4つのパターンがあります。つまり二項対立的な概念で考えると差し障りがあります。
教室間の顧客層の棲み分け
これらの音楽教室はメインラインの顧客を別に設定していると思われます。具体的には、大手系列は「アマチュアで音楽を楽しむ人」、音大系列は「将来の生徒(=音大に行く人候補)の囲い込み」、小規模教室と個人教室は教室によって違うので一概には言えません。
このような主要顧客の属性によって市場を棲み分けするというのは、他の業界でも同様です。自動車業界を考えてみましょう。自動車にお金を使う人は高い外国車を好むでしょうし、必要に迫られて渋々自動車を買う人は国産でなおかつ低価格帯の自動車の顧客でしょう。同じ「自動車を買う人」でも属性が異なるわけです。
演奏レベルとそれに適した教室
日本ではあまりメジャーではないですが、イギリスのABRSMのグレードに教室のレベル目安を作りました。
各グレードの中身はABRSMのPDFページをご覧ください。
https://gb.abrsm.org/media/65106/violin-initial-2020-rev-sep-2020.pdf
大まかな目安ですと、Grade 4が第1ポジションと第3ポジション間のポジションチェンジぐらいになります。
小規模教室や個人教室は教室によって違いがあるので、習いに行くところによって事情は変わってくると思います。一概には言えません。
講師のレベル
どうしても気になるのは講師のレベルですよね。
大手系列の場合、ヤマハ系ならヤマハPMS資格を取っているので、一定のレベルはそこで認証されています。
音楽教室で楽器を教える行為というのは免許が不要です。逆にいうと教室を作って先生を名乗ること自体は法的に問題ありません。その意味では小規模経営のところは講師の質にばらつきがあるはずです。
ちなみに、講師のプロフィールに誰に師事したとか、コンクールの受賞歴が長々と掲載されていたりするのは、統一的に点数化されたものが世の中に存在しないのでそういう書き方になってしまうのだと思われます。
ちなみに、どこの音楽大学を出ているかというのは実務上あまり意味がないみたいです。学校の先生が東大卒だからといって指導力もあるとは限らないのと似ているかもしれません。
大手系列教室の留意点
バイオリン以外の楽器で「地方都市の楽器店が運営している場合、楽器によっては都市部と同じカリキュラムでもテキストに書いてある以上のことは何も教えてもらえない」という趣旨の話を聞いたことがあります。
音楽教室選びの方法
では教室選びです。
プロフェッショナルになる場合
私は普通にアマチュア止まりで大手系列ですが、プロフェッショナルを目指す方は、大手系列教室にはいらっしゃいません。
プロフェッショナルでやっていく人は、地元の教室で習い始めて、才能がありそうだとわかると先生から先生を紹介してもらって、気づけば音楽大学コースというパターンが続いているものと思われます。
大人から趣味でやりたい場合
大人から趣味で楽器をしたい方は最初は大手楽器店系列の方がいいかなと思います。基本的に楽器界隈に知り合いが少ないことが多いと思いますので、人脈のない状態でいきなり個人の教室を探すのは大変です。
大手楽器店系列は振替などで確かに融通が効きにくい部分はありますし、月謝も高めです。ですが、先生とご自身が何か問題を抱えた場合に間に教室のフロント部門が挟まるので、そういった面では安心です。
ちなみにヤマハのカリキュラムでは第3ポジションまでが一区切りで、第4ポジションから第7ポジションまではオプション的な位置付けでカリキュラムに含まれます。そのレベルに達した場合は先生と要相談になります。
よくあるパターンとしては、大手系列→小規模教室または個人教室という流れが見られます。逆パターンはあまり見ません。月謝的には後者の方がかなりお安いですね。
体験レッスンについて
習い始める前に多くの場合体験レッスンを受けられるケースは多いです。多くの場合体験レッスンは無料のことが多いように感じますが、一点だけ注意を。
経費の問題
私たち習おうとしている側が無料の体験レッスンを受ける場合、金銭的な負担は生じません。では、逆の立場だとどうでしょうか。
例えば教室の運営元の立場だと、レンタルルームなどで使えるはずの部屋が使えなくなったりします。また講師にも寸志ぐらいは必要でしょう。というのはレッスンを委託する立場にも関わらず、タダで仕事をさせることは無理筋だからです。
また講師としても、例えば拘束時間が伸びたり、休憩時間が短くなります。また、体験レッスンのために何か準備が必要かもしれません。
確かに販売促進費的な位置付けで、生徒として確保できればペイできるという考え方もあります。とはいえ、私たちがタダで受けている間にも費用は確実に発生していることを頭の片隅に置いておくべきかなと思います。
また、体験レッスンを渡り歩いてレッスン費を浮かせようとする人がたまにいます。その人がやっていることは、モニター品の化粧品コレクターと大して変わりありません。
なお体験レッスンであっても有料の場合も当然あります。これはフリーライダー対策という側面もあります。
業界の事情
ここからは少しマニアックな話です。
なぜ大手系列は月謝が高いのか?
これは大人の事情によるものです。
大手系列は、例えばヤマハ系列では、基本的に各教室をヤマハが直接運営(一部ヤマハの子会社が経営している教室も存在します)しているわけではありません。
地場の楽器店がフランチャイズ主のような形になり、ヤマハから「このカリキュラムと講師を紹介するから上納金を払ってね。」と言われて運営しています。つまり私たちの月謝は、講師と楽器店とヤマハで分けることになります。
これが例えば個人教室ですと、楽器店とヤマハの取り分は存在しないので、講師の取り分が同じ場合、月謝は安くなるかと思います。
結論
ライトに音楽を楽しみたい方で、楽器界隈に知り合いがいない場合は大手一択かなと思います。大手系列に通っていてもだんだんと楽器界隈にツテができてくるはずです。それから次のステップに進むのもありだと個人的には思います。