Last updated on 2021年5月26日
バイオリンはお高いイメージを持たれている楽器です。実際、バイオリンと呼べるような楽器は最低でも5万円は出さないと買えません。そんなバイオリンの日本における流通事情をご紹介します。
用語の説明
さて、記事を読む前に用語の説明をしておきましょう
手工品と大量生産品
「バイオリン」と一口に言っても種類があります。大きく分けると手工品と大量生産品があります。手工品はその名の通り、ハンドメイドによる製作です。大量生産品は工場や大きな工房などで流れ作業を基本として作られるものです。この2種類はどちらが優れているいいというわけではありませんが、手工品の方が高くつきます。
オールド・モダン・コンテンポラリー
バイオリンは製作年代によって、古い順に「オールド」「モダン」「コンテンポラリー」の3種類に分けられます。「オールド」は17世紀から19世紀前半に作られたバイオリンを、「モダン」は19世紀後半から20世紀前半までに作られたバイオリンを、「コンテンポラリー」は20世紀後半以降に作られたバイオリンをそれぞれ指すことが多いです。
日本のバイオリン市場
「日本のバイオリン市場」と言っても幅がありすぎます。今回は金額帯別に解説していきます。
0~30万円
この価格帯のバイオリンは工場で大量生産されたものと考えてまず間違いないでしょう。生産地はチェコ、ドイツ、中国などが主要産地でしょうか。安いから必ずしも悪いわけではなく、新作なので健康状態の良いものが手に入る可能性が高いです。
30~80万円
この価格帯に入ると中級者以上の人が買う価格帯になります。バイオリンの選択の幅もかなり増え、大量生産品でも19世紀後半以降にフランスのミルクールで作られたバイオリンや、イタリアを除くヨーロッパ各国で作られた手工品のバイオリンも手に入ります。しかし、そこが落とし穴だったりします。
モダンフレンチの罠
モダンのフランス製楽器は一般にモダンフレンチと言われ日本市場で数多く流通しています。なぜ数多く流通しているかというと、ヨーロッパではそこら中にモダンフレンチが転がっているからです。19世紀後半、時は産業革命の時代です。フランスのミルクールではバイオリンの大量生産が確立され、一大産業になっていました。大量生産され、あまねく行き渡ったために、死蔵されているバイオリンが多く存在します。そういった楽器を日本の楽器店が仕入れてきて、修復し、我々に販売しているという構図です。ヨーロッパではこうした楽器はあまり高評価ではなく安い一方で、日本では珍重されるため、採算が取れるわけです。
流通について少し詳しく述べると、ヨーロッパではモダン楽器のバイオリンを集めて頻繁にオークションが開かれています。値段は日本における販売価格の1/3程度の値で落札されていきます。状態は悪いものが多いのですが、それらを日本に持ち帰って、修理・修復して販売されています。大型店ではこれらの楽器を含めて「オールド楽器」と呼ぶ場合があり、注意が必要です。
買うならドイツ製の大量生産品の新作を
この価格帯でバイオリンを買うならドイツ製の大量生産品の新作が堅い選択だと思います。大量生産品とはいっても値段が上がれば上がるほど作業工程が手工製に近付き、一本一本丁寧に仕上げられるようになります。
80~150万円
この価格帯ではコンテンポラリーの手工品の楽器が多く手に入ります。普通に弾くならこれ以上の金額を出す必要はありません。イタリアを含めて手工品の楽器の世界になります。日本人のバイオリン製作家も大体これぐらいの値段でオーダーメイドで作ってくれます。
イタリア製の楽器には注意
イタリア製の楽器は、注意が必要です。現在、イタリアではクレモナという町が弦楽器の生産拠点として名高く、多くの製作家とその弟子が毎日バイオリンをせっせと作っています。この、「製作家とその弟子」という部分がミソで、日本ではあたかも製作家が一人で一からバイオリンを作っているイメージがありますが、実態としては弟子が頑張って作って、仕上げだけを師匠がやり、師匠のラベルを貼って日本に運ばれてくるなんということはザラです。もちろんそうした楽器の品質が低いわけではありませんが、そういう事情も知っておいた方がいいでしょう。
おすすめは日本人作家の日本製だが…
さて、イタリア製の楽器は珍重される一方で日本人作家のバイオリンは比較的マイナーな存在です。マイナーゆえに値段も低く抑えられている傾向があります。有名どこの作家さんでも100万円くらいでまでで買えます。
ですが、日本ではバイオリン製作家に関して特に必要な資格はありません。また、バイオリン製作家という肩書を名乗ることは全くの自由なので、素人同然の人でも堂々と楽器を売っていたりしますので、やはり注意が必要です。
150~600万円
この価格帯は、普通の人ならまず、買う必要のない楽器です。音大を卒業してプロでレコーディングするとか、コンサートをやるとか、そういう需要がなければ無縁の価格帯です。
600万円以上
銘器の域に達します。買う必要は全くありません。骨董品としての価値も見いだされ、ストラディバリやガルネリ・デル・ジェスのように億を超える値段で取引される楽器もあります。
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